省エネコンシェルジュ制度

投稿者: | 2009-12-01
183 views

2009年11月27日に、WWFから「脱炭素社会へ向けたポリシーミックス提案」のVer1が発表されました。京都大学の諸富先生がキャップとなって、排出量取引を中心に日本の温暖化政策を提案するもので、私はその中で家庭部門を担当しています。
家庭の対策といえば、個々人の努力を呼びかけるものがほとんどで、あまり効果をあげてきませんでした。そこで、家庭における実現可能な温暖化対策の施策として、「省エネコンシェルジュ制度」を新たに提案させてもらいました。『脱炭素社会に向けたポリシーミックス提案』Ver.1(PDFファイル)の第三章に記載していますので、ぜひご覧下さい。
※政府(環境省)の「環境コンシェルジュ」とは別ものです(ほぼ同時期ですが、別個に出されました)。こっちのほうが将来展開もあり、いい制度だと思います。

省エネコンシェルジュ制度の大きな特徴は以下の2点です。

  1. エネルギー供給業者に、家庭の温暖化対策を義務づける
  2. 省エネコンシェルジュを1万人育成し、家庭の温暖化対策の提案・改善を行う

まずはエネルギー供給業者(電力会社、ガス会社)へ、家庭の温暖化対策を義務づける制度ですが、EUやアメリカでは一般的な制度です。イギリスでは2002年からEEC(エネルギー効率改善関与)という政策が始まって、エネルギー供給業者の取り組みにより家庭のCO2排出量を40万トン程度削減する成果があがっています。
電力会社やガス会社は、エネルギー供給量に応じて利益があがる仕組みとなっていますが、これから温暖化対策が進んでいく中で、このままでは社会的な悪者となりかねません。彼らにも、家庭の省エネ対策をして利益をあげることを社会的な役割として認めていくことで、みなが協力して温暖化対策ができる社会体制を作っていくことができます。
日本では、自治体や国が家庭の温暖化対策を進めてきましたが、企業が関わることにより、より効率的な家庭の温暖化対策が進められることも期待できます。
続いて、省エネコンシェルジュの育成と、家庭への提案・対策方法です。
家庭での温暖化対策技術は発展しており、負担がない(費用がかかるが、光熱費削減で元が取れるものを含む)対策だけでも、家庭のCO2排出量を半減程度までしていくことが可能です。現状で対策が進んでいないのは、初期費用がかかり負担感があることと、選択をするための十分な情報が伝わっていないことがあげられます。
家庭の状況を調べることで、より適切な提案をすることが可能です。こうした技術は、兵庫県の「うちエコ診断」などで蓄積されつつあります。また、広報やマスコミ情報だけでなく、顔と顔をあわせて、親身になった提案をすることを通じて、より具体的な選択行動を促すことができると期待されます。
2020年までに全ての家庭に診断をするためには、1万人程度の省エネコンシェルジュが育成され、業務として行っていくことが必要になります。このためには、年間1000億円程度の経費がかかりますが、新たな雇用が生まれると考えることもできます。
また、提案したことを選択してもらうために、導入補助も必要になります。このために年間8400億円を見積もりましたが、これにより2020年までに家庭部門で現状より39%の二酸化炭素を削減することが可能です(電力CO2原単位を固定として推計)。
これらを、電力・ガス価格に上乗せしたり、環境税を充てることでまかないます。金額は大きいですが、現状でもエコポイント制度に3000億円支出されていますし、今後の温暖化対策の推進を考えると、非現実的な金額ではありません。
また、太陽光発電の倍額買取制度では、マンション住まいなど太陽光設置ができない家庭では、単なる負担となりますが、省エネコンシェルジュ制度では、全ての家庭に等しく省エネ診断・補助を受ける機会が提供されます。光熱費も削減されますので、家庭にとってもメリットがある制度となります。

コメントを残す